2005年 08月 29日
―――Trains |
いつの間にか眠っていたようだ。目を開くと電車はトンネルの中だった。窓に自分の顔が映っている。
銃声がして車内が騒然となる。
1人の男が車両の中央で、天井に向けて銃を構えた格好で叫んだ。
「いいかお前ら、全ての抵抗は俺達の前には無駄だ!! 武器を捨てろ! 女子供はおとなしく先頭車両に移動しろ! 俺達のいう事に従うなら危害は加えん! わかったらとっとと行動するんだ!!」
叫び終わるや否や車両の前方と後方からさらに2人ずつの男が現れて乗客に銃を向けた。
中年の女が意味不明の悲鳴をあげ、あっという間に3丁の銃で蜂の巣にされて沈黙した。その光景のおかげで車内はそれ以上のパニックになる事もなく、男達の支配が決定した。
女子供が移動していくのを見るついでに車内を見渡してみれば、俺が乗ったはずの電車よりもかなり古い作りの電車に見えた。
窓枠や椅子は木で出来ており室内はランプの明かりで照らされていた。
長すぎるトンネルを疑問に思い、窓の外に目を凝らしてみればかすかな星明りも見える。
何かがおかしい。この状況以上に、何かがおかしい。
「おい、こっちを向かずに聞け」
隣の男が小さな声で話しかけてきた。
俺の視線の先では最後の子供が車両を移動し終えた。前方にいた男2人が後についていく。ああやって後ろから車両を一つずつ支配していくのだろう。
「どうやら奴ら、先頭車両以外を切り離して身軽になるつもりだ。人数が減ってる今やっておかないと不利だ」
「……何の話?」
「おい、時間が無いんだ、冗談はやめろ。いくぞ!」
男はぱっと飛び出すと自分の後ろにいた敵を殴りつけ銃を奪った。すぐ横に控えていた男に向かって発砲し、その男の胸に飛びつくようにして座席に倒れる。木の背もたれがはじける音。
「緊急事態だ!! こっちに来い!」
大将が叫ぶ。さきほど移動した男が駆け足で前の車両から戻ってくる。
「2人やられた! お前は他の奴を牽制しろ。お前は援護だ!」
大将が走りだすのを見た瞬間、俺の体が無意識に動いた。
座席を飛び出した姿勢で大将のわき腹にひじを叩き込む。
そのまま反対の座席にもつれ込み、変則的な馬乗りの姿勢で殴る。両者片手は銃から離せない。とにかく一発でも多く入れた方が勝つ。
援護役の男は俺の行動に気を取られている間に俺の仲間が殺したようだ。牽制役は、動けば他の客からも攻撃されるかもしれない事を気づいている。
大将の手から銃を奪い取った。突きつけて立ち上がると牽制役の男もすでに両手を挙げて降伏の意思表示をしていた。
電車がとまった。男達を降ろし、俺達も続いて飛び降りる。
汽笛がなった。煙を吐き出して動き出したそれは月明かりに浮かび上がり、蒸気機関車だと知れた。
寂れた田舎の駅で俺は電車を待っていた。
セミの声が空気全体を支配していた。線路から陽炎がもやもやと上がっている。
風の通りが良いおかげか、駅構内からは日光のまぶしいその世界がはるか遠くにあるように感じた。
ジリリリリリリリ… ン ジリリリリリリリ… ン
急に駅長室の電話が鳴った。
無機質なその音に振り向くが駅長室には誰もいない。
周りを見渡してもその電話を取るべき駅員の姿が見当たらない。
俺は駅長室に近づき、何を思ったか電話を取った。
聞こえてきたのは低い男の声だった。なぜか執事の姿を想像してしまった。
『こんにちは』
「今誰もいませんよ」
『了承しております。貴方にお話があるのです。これから来る電車にお乗りになっていただきますが、注意を申し忘れておりました』
「ちょっと。人違いじゃないですか?」
『今回のパートナーが少々遅れております。しばしお待ち下さい。それと、あくまでも貴方のお仕事は全体の被害を少なくする事だとお心得ください。それでは―――よい旅を』
こちらが次に口を開く前に電話は切れた。慇懃な口調とは裏腹に強引な対応だ。
電話を置いて顔を上げると、視線の先につばの広い白い帽子を被った女が走ってきていた。
こちらを見つけにっこりと笑うと走ったままで
「お待たせしてすみません! すぐ参りますので!」
と爽やかに言った。
銃声がして車内が騒然となる。
1人の男が車両の中央で、天井に向けて銃を構えた格好で叫んだ。
「いいかお前ら、全ての抵抗は俺達の前には無駄だ!! 武器を捨てろ! 女子供はおとなしく先頭車両に移動しろ! 俺達のいう事に従うなら危害は加えん! わかったらとっとと行動するんだ!!」
叫び終わるや否や車両の前方と後方からさらに2人ずつの男が現れて乗客に銃を向けた。
中年の女が意味不明の悲鳴をあげ、あっという間に3丁の銃で蜂の巣にされて沈黙した。その光景のおかげで車内はそれ以上のパニックになる事もなく、男達の支配が決定した。
女子供が移動していくのを見るついでに車内を見渡してみれば、俺が乗ったはずの電車よりもかなり古い作りの電車に見えた。
窓枠や椅子は木で出来ており室内はランプの明かりで照らされていた。
長すぎるトンネルを疑問に思い、窓の外に目を凝らしてみればかすかな星明りも見える。
何かがおかしい。この状況以上に、何かがおかしい。
「おい、こっちを向かずに聞け」
隣の男が小さな声で話しかけてきた。
俺の視線の先では最後の子供が車両を移動し終えた。前方にいた男2人が後についていく。ああやって後ろから車両を一つずつ支配していくのだろう。
「どうやら奴ら、先頭車両以外を切り離して身軽になるつもりだ。人数が減ってる今やっておかないと不利だ」
「……何の話?」
「おい、時間が無いんだ、冗談はやめろ。いくぞ!」
男はぱっと飛び出すと自分の後ろにいた敵を殴りつけ銃を奪った。すぐ横に控えていた男に向かって発砲し、その男の胸に飛びつくようにして座席に倒れる。木の背もたれがはじける音。
「緊急事態だ!! こっちに来い!」
大将が叫ぶ。さきほど移動した男が駆け足で前の車両から戻ってくる。
「2人やられた! お前は他の奴を牽制しろ。お前は援護だ!」
大将が走りだすのを見た瞬間、俺の体が無意識に動いた。
座席を飛び出した姿勢で大将のわき腹にひじを叩き込む。
そのまま反対の座席にもつれ込み、変則的な馬乗りの姿勢で殴る。両者片手は銃から離せない。とにかく一発でも多く入れた方が勝つ。
援護役の男は俺の行動に気を取られている間に俺の仲間が殺したようだ。牽制役は、動けば他の客からも攻撃されるかもしれない事を気づいている。
大将の手から銃を奪い取った。突きつけて立ち上がると牽制役の男もすでに両手を挙げて降伏の意思表示をしていた。
電車がとまった。男達を降ろし、俺達も続いて飛び降りる。
汽笛がなった。煙を吐き出して動き出したそれは月明かりに浮かび上がり、蒸気機関車だと知れた。
寂れた田舎の駅で俺は電車を待っていた。
セミの声が空気全体を支配していた。線路から陽炎がもやもやと上がっている。
風の通りが良いおかげか、駅構内からは日光のまぶしいその世界がはるか遠くにあるように感じた。
ジリリリリリリリ… ン ジリリリリリリリ… ン
急に駅長室の電話が鳴った。
無機質なその音に振り向くが駅長室には誰もいない。
周りを見渡してもその電話を取るべき駅員の姿が見当たらない。
俺は駅長室に近づき、何を思ったか電話を取った。
聞こえてきたのは低い男の声だった。なぜか執事の姿を想像してしまった。
『こんにちは』
「今誰もいませんよ」
『了承しております。貴方にお話があるのです。これから来る電車にお乗りになっていただきますが、注意を申し忘れておりました』
「ちょっと。人違いじゃないですか?」
『今回のパートナーが少々遅れております。しばしお待ち下さい。それと、あくまでも貴方のお仕事は全体の被害を少なくする事だとお心得ください。それでは―――よい旅を』
こちらが次に口を開く前に電話は切れた。慇懃な口調とは裏腹に強引な対応だ。
電話を置いて顔を上げると、視線の先につばの広い白い帽子を被った女が走ってきていた。
こちらを見つけにっこりと笑うと走ったままで
「お待たせしてすみません! すぐ参りますので!」
と爽やかに言った。
by embryo_3
| 2005-08-29 12:45
| 夢